風の起こし方

はるか昔に滅んだ「労り一族」の子孫 『労り人 久巫こ』 のブログ

預金残高30万の私が、五千坪の山林を購入することができた、いきさつ第4話(後編)【全8話】

第4話 痛みの始まり(後編)
 化学物質過敏症(以下CS)を発症し、私はこの文明から放り出されました。よく言えば卒業です。しかし、受け入れ先があるわけではない。自前の文明をつくり直してゆくしかないのです。私たちの存在は気の毒に思われるのは良い方で、たいがいは迷惑がられます。周囲の方の理解と協力なしに、安心した生活が成り立たないからです。とても不自由です。とても苦しみます。世界的にCS患者が急増しています。この病は発症して急速に重症化します。暗闇の独房の中です。失意のどん底です。人生が終わったと感じます。当事者もさることながら、同居の家族も運命共同体、共倒れします。このタイミングで当事者は家から出るか(といっても行き場はなく、車の中か山のテントかという人が多い)、家族が当事者を残して出るか・・。同居が非常に困難になります。多くの患者さんがこの時期、うつ状態になります。メンタルがやられるだけでなく、苦痛から逃れるための対策にお金がかかり、経済的な負担で家計はひっ迫します。

 安心してカラダを休めるせめてもの寝床を確保するために、引っ越しやリフォームをせざるを得ないのです。日常生活の具体的な困難はここでは割愛しますが、CSが生き抜いてゆく困難さは複合的です。手始めに職場での勤務が困難になり、収入源が断たれます。預金が底をつきます。就職ができませんので、体調の許す範囲で自営、もしくは自給自足、親族を頼る、場合によってはセーフティーネットを申請する。これが経済的困難です。肉体の苦痛を背負いながらです。そして、CS患者を最も追い込むのが意外といえば意外、当然と言えば当然。同居の家族、身近な親族です。

 CSはまだ新しいアレルギー疾患で、一般の人はおろか医療者の間でさえも、精神病と誤解されているほど理解されておらず、研究者も世界的に見ても少数派です。主流派からは興味の対象外となっています。日本国内の専門医は数名で、受信可能なクリニックも私の知る限り、4~5院しかありません。これは何を意味しているかというと、封殺です。知りません、いうことです。CSに対して体制側が封殺包囲網を張っているからです。なぜか?CSの存在そのものが文明を警鐘する生き証人であるからです。文明そのものに対する問題提起です。体制側はそんなに騒いでもらっても困るので、知らぬ存ぜぬ、挙句の果てには、気のせい、もしくは発病者のカラダが単に悪いだけ、で、済まそうとしているのです。こういった体制側の包囲網の影響を、CS患者の家族が受けるのは当然ですから、どんなに当事者本人が苦痛を訴えたとしても、よほどカンの良い、勉強してくださる家族でない限り、本質的な理解を得ることは難しい。それどころかCS患者を叱責したり、我慢を強いたりします。ただでさえ苦しみのさ中にあるCS患者は身の置き場がなくなり、自ら命を絶ちます。1.お金がかかる2.カラダが苦しい3.身近な人から責められる。この三重苦でいかにしてCS患者が生き続けることができるでしょうか?

 体制側は労せず人口SAKU減ができると喜んでいます。CSを発症し、急速に重症化し、絶望の暗闇に身を置く期間、私はこれを暗黒期と呼んでいます。この期間は個人差がありますが、私は4年かかりました。この暗黒期をどう生き抜くか。私は多くの本を読みました。この文明について自分なりに考察してみました。本の中に多くの同志や師との出会いがありました。そこで得た思想や考察は、かけがえのない財産です。
 CSを発症しあれよという間に重症化し、心とカラダが折れそうになる暗闇の中の孤独な暗黒期。CS患者に果たしてその先があるのか?私は一人でも多くのCS患者の力になりたいと思い、私の経験を元に、最悪の事態をさけてもらいたい一心で、今、書いています。

 当事者の同志の方へ
暗黒期に無理をしないでください。自分を守ることが優先です。苦しいこと、やめてほしいことは身近な人にはっきりと伝えてください。理解を得られなかったとしても、一度や二度であきらめないでください。あなたには経済的にも精神的にも支えてくれる人が絶対に必要です。遠く離れている人でもかまいません。あなたには毒のない安心して暮らせる環境で生きる権利があります。毒に反応できるということは、あなたが純度の高い人間であることの証左です。命を踏みにじる、支配階級の冷徹な人間味のない連中の犠牲者になる必要はない。ただ、今のあなたはとてもナイーブで抗う余裕がありませんから、ただただ一日一日生き続けてください。

 安心して眠れる寝床、自分の居場所、聖域を守ってください。変化がなくても焦らないでください。本を読んでください。本の中にあなたの友、同志、師がいます。静かに時を待ってください。いつか必ず春がやってきます。それは厚い氷が少しづつ融け薄くなっていくような僅かな変化です。その変化に気がついたとき、もう大丈夫かな、と自分で思えたとき、その時に行動を起こしてみてください。それまではじっと安心な居場所にとどまっていてください。
 CSの当事者であることを受け入れ、災難にあったという被害者意識から、むしろ、新しい文明の創造者として選ばれた、当たりくじを引いた、という境地に立つことができたなら、それは暗黒期を抜けた、という知らせになります。カラダの苦しみが変わるわけではありません。しかし、物事のとらえ方が変わることで、必ず良い現実を引き寄せることができます。毒に反応することは正常な反応です。私たちは捨てられた者ではなく、選ばれし者なのです。

 同居のご家族、身近な方へのお願いです。
 CS患者さんが苦しまれる物、全てを処分、捨ててください。個人差はありますが、ご本人が訴える物、隠したりせずどんなに新品でも高価でも捨ててください。CS患者が特に恐れるのが、国内シェア1,2,3,の合成洗剤メーカー御三家、米国P&●社の主力商品ボー●ド及び●ノア(私にとっては最強DOKU)、KA王ア●●ク、●ミンG、●イオン●フラ●ウルトラZe●oといった、除菌、消臭、芳香を謳った、DOKUのカクテルで、洗濯をされた衣類を着た人に近づくことができません。強力な毒ガスです。動悸、胸のしめつけ感、頭のしめつけ感、カラダの痛み、吐き気、思考力低下、等々の大変な苦痛を受けます。最悪の場合、失神することさえあります。大変な強力な毒を揮発しており、そればかりでなく、テクノロジーの粋を極めているので、いったんDOKUガスに汚染されると、臭さが持続するため、臭いが取れず、とんでもない被害を被ります。そのほか虫konaー●u、べー●といった殺虫剤も即死級です。近づけません。中枢神経にてきめんに作用し、吐き気、気持ち悪さ、動悸、胸のしめつけ、息苦しさ・・で虫同様、殺されそうな苦しみです。そのほか、リフォーム時の水回り用抗菌ボンド、シロアリ退治の防虫剤・・特に間違いなく苦しむものを挙げましたが、これはごく一部にすぎません。



 少なくとも反応する物質のない家、寝室にしてあげてください。先行きは見えませんが、同伴する覚悟を決め、同じ脱化学物質生活に切り替えてください。そして何よりもそういった対応を強いられることに対して、不満を言ったり文句を言ったり、反抗したりしないでください。当事者でない限り、苦しみ苦痛はわかりません。この対応をしなければ回復は見込めませんし、対応を誤れば、本人のメンタルが折れ、取り返しのつかない結果になる恐れがあります。

 家の中が空っぽになってもいいという覚悟をもってください。場合によっては衣類、寝具も全て廃棄の可能性もあります。詳しいことは割愛しますが、この病気を単なるわがままとか、ひ弱な人間だとカツをいれたり、侮(あなど)ったりしないでください。人間に有害な化学物質に正常に反応しているに過ぎません。場合によっては引っ越しやリフォームも必要です。経済が底をつきます。この費用は治療費、療養費と割り切ってください。初期の対応は大変ですが、落ち着けば本人も用心しながら、制限があっても工夫して生活できるようになります。

 CSはこの文明社会で誰が発症してもおかしくない、新型の環境アレルギーです。精神疾患ではありません。複合的に、人工的な化学物質に反応しています。回復は不明です。CSは世界中で急増しています。経過には個人差がありますが、多くの患者さんは発症してあれよという間に暗黒期に突入します。そして、ほぼ鬱に近い状態で精一杯、一日一日を生き抜いて生活しています。先の見通しは立てられません。毒を避け、逃げ、恐怖におびえ、苦しい日々を送っています。この暗黒期に、本人が何かのきっかけをつかむことができれば、事態が好転する可能性があります。それをつかむことができなければ、最悪の場合、自ら命を絶つ可能性があります。その「何か」とは個人差があり、一概には言えませんが、私の場合は、真実を知ったことです。

 そのことによって私は目醒め、新たなステージに立つことができました。とても深い洞察でした。CSの苦しみを経験したからこそ、真実を究明することができたのです。本人は大いなる課題の中に生きています。洞察を得たからと言って、痛みに変化があるわけではありませんが、少なくとも最悪の事態を回避できたと考えて良いでしょう。私はこの苦しみの中で自分の役目を知ることができました。CSを肩書にして、CSの暮らしやすい文明を築いてゆく立役者となるのです。この文明からは退職を余儀なくされましたが、新しい文明を築いてゆく仕事に、生きる目的を見出すことができると私は信じています。どうか力になってあげてください。

 CS患者は世界的に見ても、自死に至る確率が非常に高い疾患であるという統計がでています。

第5話 竹林の牛舎に住むと決める へつづく